昨日の日曜日、代々木能舞台に行ってきました。
能楽堂なのですが、今回は能の鑑賞ではありません。
落語「柳家さん喬」と二胡奏者「程農化」両氏の、不思議なコラボレーションの舞台を観にいったのです。
梅雨時特有の雨が降りしきる新宿駅で K 嬢と待ち合わせ、招待してくれた池田医師の待つ能楽堂へ向かいました。
能楽堂に着くと、中からかすかに二胡の音が聞こえてきます。
実を言うと、私は二胡を聴くのが今回初めてなのです。
他の楽器とともに演奏しているのを聴いたことは、中国に滞在していたときにありましたが、今回は二胡の単独演奏ということで、本当に楽しみです。
池田先生は既に到着されており、私と K 嬢は特別の席に案内していただきました。
能楽堂の雰囲気は、いつも何かしらの「におい」を醸し出しています。
「技」の染み付いた歴史の重さは、それだけで私達の感性をただならぬ世界に引き込んでしまうようです。
まず最初に、程先生のお弟子さん四人による、二胡の演奏です。
女性4人による演奏は、なかなかに優しく、楽しめましたよ。(最初に演奏した「エーデルワイス」はいらなかったかも・・・)
そして、いよいよ程農化先生の二胡独奏です。
驚きました!
二胡という楽器がこれほど肉感的な、そして奥深く、様々な音色を醸し出すことが出来るとは思いもよりませんでした。
三曲ほど聴き、その世界に圧倒されつつも馴染んできたころ、程先生の作曲された「さくら回想曲」という演奏に入りました。
この曲には、それこそ魂を揺り動かされましたよ。
さくら花の持つ「はかなさ」とその裏側に潜む「ぶきみさ」との凄まじい葛藤!
めくりめく両者の相克の旋律を奏でる奏者の巧みさ。
昔、埴谷雄高の小説を読んだときに感じた時と同じような戦慄が背中を走ります。
40年前にフィードバックしたような状態は、それはそれで嬉しい感覚なのです。
観客が日本人ばかりということもあり、その感性に考慮したのでしょうか、後半部分に日本唱歌「さくら」をアレンジした旋律をいれ、自然の情景に戻してしまったのが私としては少し残念な思いもしましたが、ともあれ素晴らしい一曲ではありました。
程先生の演奏が終わり、次が「さん喬師匠」の落語「寝床」です。
何度も聴いたことのある演目ではあるのですが、古典落語の重鎮といわれる師匠の落語は絶品!
腹を抱えて笑い転げて一席を楽しみましたよ。
そしていよいよ本日のメイン、さん喬師匠と程農化先生の不思議なコラボの開始です。
演目は「牡丹燈記」。
落語中興の祖といわれる「円朝」が、「牡丹燈篭」という名作をつくる「種話」となった中国古典の話です。
さん喬師生の話に合わせて、程先生の二胡の音色が重なるのですが、驚きました!
落語と二胡の音色のコラボが、これほど見事にマッチするとは思いもよりませんでした。
素晴らしい!
まるで、品川和尚がおっしゃる「異次元」との接続、ディメンションとの邂逅です。
とてもとても・・・、論評など言えるはずもありません。
ただただ、その世界に引きずり込まれて時間が過ぎて行きました。
チャンスがありましたら、どなたも一度触れてみることをお勧めいたします。
雨の日曜日、この素晴らしい時間をもたらしてくれた池田先生に、ただただ感謝、感謝です。
誠に有難うございました。
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